【曲がり角に立つレジャー・観光と環境】
アウトドアブームが東南アジアのマングローブ林を破壊してしまったということがありました。マングローブとは熱帯、亜熱帯地方の海岸付近に林立している森林を構成している木を総称していいます。この開発で悪影響を及ぼしたのが、日本に輸出されているエビの養殖池です。
クルマエビに似たこのエビは、普通の魚屋の店頭に並び、天丼や天ぷらそばの値段をリーズナブルにし、えびの好きな日本人にとってはとても有り難いものになっています。でも、このエビが養殖されているのは、マングローブを切り開いて作られた巨大な海水の入る養殖池なのです。
マングローブの森は河口部分に広がっていて、生命を生み出し、育み、水を浄化する大切な場所です。しかし、そこを切り開けば、そこに生息している生命の生態系は大きく狂ってしまいます。
ではエビの輸入を制限すればいいのかというとなかなかそうはいかないのです。そこで生活している人がいる以上、彼らはまた次の、マングローブ開発で儲けられるものを探すだけです。どのような生活をするべきなのか?これは国家の問題であるとともに、国際問題でもあるということです。このように意識していなくても環境に負荷を掛けてしまうことはたくさんありますし、それはレジャーでも同じことが言えます。
環境整備にはお金が必要です。残念ながら収入がなければ、それは後回しにされてしまいます。環境とレジャー・ビジネスの問題は切っても切り離せないというのが現実です。しかし、表面だけのビジネス目的で環境を仕切れば、結果的に観光の目玉であった環境はなくなってしまい、レジャーもビジネスも成立しなくなります。
そこで最近、このレジャーについてもさまざまな取り組みが行われています。その例として、東日本の代表・河口湖と、西日本代表・琵琶湖について紹介します。 法廷外目的税という言葉をご存知でしょうか。この目的税を、全国に先駆けて実施したエリアが河口湖です。バス・フィッシングのほか冬期を中心としたニジマスの放流で、今やゲーム・フィッシングの聖地とさえなった河口湖ですが、釣りをするときかならず必要なのが遊漁券と、それに付加される「遊漁釣り税」です。
この税金は目的税ですので、使用が限定されています。河口湖の場合は駐車場やトイレの設置・整備のために使われていますが、一般観光客が使っても税は徴収されないという多少不公平感は残るように思います、しかし市街地から離れた駐車場やトイレとなるとこれはもう釣り人の利用以外はほとんどないといってもいいでしょう。本当ならば使う人が使用するものに負担する「完全受益者負担」が税金の基本ではないかと思います。
一方、琵琶湖でも「湖面使用税」という法廷外目的税の導入が予定されています。これは水上バイクを中心に、プレジャーボートにかけられるもので、河口湖と違うのは「税を徴収することで、環境に負荷を掛けている意識を利用者に持ってもらう」ことが目的という点でしょう。
利用者へ還元することによる観光の振興が目的ではありません。これは水質保全の目的もありますが、騒音、事故などで地域住民からの苦情が多いということも影響しているのです。それよりも早く、排気ガスに含まれる有害物質問題により、2ストロークのエンジンを使った水上バイクについては2002年半ばに禁止されています。
2002年春に琵琶湖適正利用懇話会から滋賀県に提出された提言では、この法廷外目的税の提案のほかに、ブラックバスのリリース問題についても賛否両論の意見があげられています。2002年度の滋賀県の外来魚対策費は3億8000万円あまりだとも言われていますが、試算ではバス釣りの経済効果は50億円を越えているということも、両論併記をせざるおえなかった理由のひとつといえるのかもしれません。また、航行区域についての規制(徐行など)や、プレジャーボートの出航場所を限定するなども、この提言には盛り込まれています。