【自動車の未来ととりまく環境】
排気ガスに関しては、燃料電池が最有力ですが、それまでの間は低燃費・低排出ガスのガソリンエンジンやそれと電動モーターを組み合わせたハイブリッドカー、黒煙や窒素酸化物対策を施し、低硫黄経油を燃料とするディーゼルエンジンが用途によって使い分けられていくでしょう。
ガソリンエンジンの低公害化に関してはさまざまな技術が使われており、浄化用の触媒の進歩とあいまって現在では大気汚染が問題となっている都市の空気よりも汚染物質の少ない排気ガスの車が作れるほどのところまできています。また、こういったエンジンと電動モーターを組み合わせることにより、大きな力が必要となりたくさんの排気ガスが発生する場合にはモーターがアシストし、エンジンの負荷を与えないといった方法も選択されています。さらに、エンジンはあくまでも発電用とし、もっとも効率のよい(環境負荷の小さい)状態で常時回しておいて、車は電動モーターで走らせるという実験もされています。
また、石油資源の枯渇対策としては石油採掘時に出る余剰ガスや植物の発酵によって作られるアルコールを燃料とするエンジンの研究もされています。アルコール燃料は従来の石油系に合わせて作られた一部の部品への腐蝕の問題もあり、給油所も専用に用意しなければならないというハードルもありますが、15年ほど前はバイオマス・エネルギーに注目したブラジルで実際に大量のアルコール燃料車が走っていたこともあった程です、将来性は決して低いものではないのかもしれません。
ディーゼルエンジンに関しては、貨物輸送の大型トラックをはじめ、不可欠なジャンルです。また、そもそもの好燃費特性を生かせば、資源の枯渇にも十分対応できるので、ヨーロッパでは乗用車としても人気があります。大気汚染対策としての硫黄分の少ない燃料や、ディーゼルエンジン用の浄化触媒といったさらなる排気ガス浄化システムの開発も進んでいます。
このようなエンジンについての環境への負荷を下げる改善策は、陸上の交通機関だけにとどまっていません。これからプレジャーボートを含む船舶用エンジンについても応用され、さまざまな改良が加えられていくことでしょう。